ファインダーの中には何が見える

思いついたことをつらつらと書きます。

生まれたところの団地

台風一過の快晴とはいかず、空はどんよりと今にも再び雨が落ちてきそう。団地はぐるっと片側一車線の道路が楕円に巡らされていて、その円の中に30くらいの5階建て棟が整然と並んでいる。朝まで降っていた雨のせいで13棟の壁には黒いシミが浮き出ており、カビの匂いがここまで届きそうだ、と13棟に続く階段の途中に立ち止まって僕は思う。


小学校の頃、毎日、駆け上がった階段は思ったより狭くカビ臭さが鼻をつく。青と緑、どちらでもない質素な扉は何も変わっていなくて、5階の扉を開ければあの頃の家族が迎えてくれる、そんな気がした。


ただ、あの頃のように子供たちの声が聞こえて来ず、団地は死んだようにひっそりとしていた。