ファインダーの中には何が見える

思いついたことをつらつらと書きます。

もういちど槇原敬之を聴きながら

昔、大阪の上新庄に住んでいた。その上新庄駅の近くに、店内の
水槽に熱帯魚が泳いでいる小さな喫茶店があり、当時の僕は水槽
近くの席で色鮮やかな魚を見ながら時間を過ごすのがお気に入り
だった。

その日も、僕は仕事帰りにいつもの席に座り、ボーっと熱帯魚の
泳ぐ様子を目の前にコーヒーを飲んでいた。



突然、テーブル上に皿が差し出された。
差し出された方向を向くと、すでに顔なじみになっていたぽっち
ゃりしていて笑顔がとてもかわいいウェイトレスが立っていた。
「店長からですよ。」
その差し出した皿には、新鮮な野菜を厚切りの食パンで挟んだサ
ンドウィッチがのっていた。
僕がカウンターの方向を向くと、髪をきっちり七三に分けた一見
サラリーマン風の店長の笑顔が目に入った。
「有難うございます。」
僕はそう言った。


「◯◯さん、いつもお仕事お忙しそうですね。」
ぽっちゃりの彼女はそう言うと、何の他意もなくまっすぐでやさ
しさに溢れた瞳を僕に向けた。

「お身体に気をつけて頑張ってくださいね」
彼女は、今、店に入ってきた客のオーダーを取りに奥のテーブル
へ歩いて行った。


僕はテーブルのサンドウィッチにかぶりつき、水槽越しに、
他のテーブルでオーダーを訊いている彼女を見た。その間、小さな
熱帯魚たちが僕の目の前を何回も行ったり来たりしていた。


今年の初め、大阪に行ったとき、久しぶりにあの喫茶店でコーヒー
を飲もうと思って上新庄に向かった。駅に着いて、懐かしい風景
の中に想い出の喫茶店を探した。だけど、あるはずの喫茶店はそこ
にはなく、あるはずの場所には趣味の悪い音楽を流す不動産屋があ
った。

Such a Lovely Place

Such a Lovely Place


槇原敬之の「手をつないで帰ろ」を聴くと、この大阪の喫茶店
のことを思い出す。